芸名(ハンドルネーム)とプライバシー
SNSやライブ配信、動画投稿など、個人が発信者となれる時代において、“芸名”(ハンドルネームや活動名義)を使って活動している人は非常に多くなりました。芸名には、実名を伏せることで生活や家族を守るという意味があります。
しかし、ネットでの活動が日常化するにつれ、「実名がバレる」=“身バレ”のリスクも増加。軽い気持ちでの登録や、ちょっとした操作ミスで、意図せず本名や住所が露出してしまうケースも発生しています。
このような“身バレ”は、時に活動の継続を困難にする深刻な問題にもなりえます。
実名バレが起きる瞬間:具体例
以下に、実際にあった・あり得るケースを紹介します。
- SNSとECサイトを連携した際に本名が表示された
- Paypal・BASEなどで購入者情報がそのまま相手に送られた
- Googleドライブで公開範囲を間違えて本名が見えるファイルを共有した。公開したGoogleアカウントが本名の設定のままだった
- LINE連携を許可したことで、LINE名(本名)や電話番号がサービスに露出した
特にライブ配信やTwitter連携アプリなどで、「この機能を使いたい」一心で“連携を許可”してしまうことで、自分のプロフィール情報が自動で渡ってしまうことも。
中には、ユーザの同意を得る前に本名やIDをサーバーに保存するような“悪意のあるサービス”も存在します。
芸名は“法的に守られる”のか?
芸名(またはペンネーム・活動名義)は、法律上は“通称名”として扱われます。
つまり「通称を使う自由」は認められていますが、「通称を使えば実名は隠し通せる」というわけではありません。
たとえば、以下のようなケースでは“実名での登録”が義務づけられたり、法的に照会されたりします:
- 銀行口座開設や収益振込先登録(本名と一致していないと振込不可)
- 税務署・確定申告への提出
- 警察や裁判所からの開示請求
また、ハンドルネームでの活動が名誉毀損や誹謗中傷に該当した場合、プロバイダ責任制限法などに基づいて“発信者情報開示請求”が行われ、結果的に実名が開示されるケースもあります。
「芸名での活動」は安全なのか?
芸名での活動は、確かに一つの“防壁”となります。しかし、それは完璧な盾ではありません。
芸名で活動する上で、以下のような対策が求められます:
- 本名と結びつく情報(SNS, メール, Amazonほしい物リストなど)を避ける
- 登録用アカウントと公表アカウントを分ける
- 本名・住所が載るような資料(領収書、納品書など)を相手に渡さないよう気をつける
- 連携アプリや支払いプラットフォームの設定を見直す
また、“芸名の扱い”を明確にしておくことで、万一のトラブルの際に自分の活動を証明しやすくなります。
例:
- 「●●(本名)は、活動名△△として創作活動を行っている」旨の書面(自筆や弁護士への依頼)を残す
- サイトやSNSにおいて、活動の趣旨や一貫性を記載しておく
- 日常的に使う場合でも芸名名義のアカウントを用意しておく
おわりに:芸名と実名の距離感を見直そう
芸名やハンドルネームは、“創作や発信の自由”を守るためのツールです。
しかしその運用には、時としてセキュリティ意識・法的理解・SNSリテラシーなど、多角的な対処が求められます。
「名前が違えばバレない」という時代は終わりました。
その代わりに、「どういう設定で守るか」「どういう仕組みで信頼性を保つか」が、今後の活動の土台になります。
芸名であっても、自分の言葉や作品が社会とつながる“公の発信”である以上、トラブルに巻き込まれないよう、仕組みと心構えを整えておきましょう。
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